雇用保険法と労働保険徴収法と労働安全衛生法

雇用保険法とは?

会社を辞めた時に、または解雇された時に、すぐに再就職先が見つかるとは限りません。
再就職する前に貯金が尽きてしまえば、たちまち貧困状態になってアパートから追い出されてしまったり、不当な労働条件であっても契約せざるをえない状態に追い込まれてしまうかもしれません。離職後に病気やけがで働けなくなってしまう可能性もあります。

そういう時に必要な保険給付を行うのが雇用保険法。
雇用保険法は、失業等給付により、労働者の生活および雇用の安定を図ることを目的としています。

雇用保険法が施行されたのは、終戦直後の昭和22年。
古くは「失業保険法」と呼ばれていました。
その名の通り、当時は「失業」に対する給付だけが行われていましたが、近年、給付や対象者の範囲が拡大。必ずしも職を求める人達ではなく、現在働いている人も、出来るだけ仕事を継続できるようサポートを行うようになりました。
たとえば、高齢により業務内容が変わったことで賃金が著しく低下した場合や、妊娠・出産、介護などの理由により雇用の継続が困難となった場合、放置すると失業につながるおそれがあります。そのような方々に、減収した賃金を補うための給付を行うことで、失業を未然に防ぐ役割もあるのです。

他にも、失業の予防や雇用状態の是正、雇用機会の増大などを目的とした「雇用保険二事業」を付帯事業として行い、労働者等の雇用を総合的にサポートしています。
労働市場の情勢に配慮した改正が頻繁に行われることも、雇用保険法の特徴です。

 

労働保険徴収法とは?

労災保険法や雇用保険法には、実際に保険関係が成立した時の手続きや、保険料の徴収手続きなどについての具体的な定めはありません。
それらのルールは「労働保険徴収法」で定められています。
人事・総務関係の仕事をしていない限り、あまり馴染みのない法律ですが、保険料の計算方法、納付する期限、分割払いなど納付の方法、納付しなかったときのペナルティなどについて規定された重要な法律なのです。

労働保険徴収法が誕生する昭和47年前までは、労災保険と雇用保険の事務は、それぞれの法律で別個に規定されていたため、事業主、政府ともに煩雑で非効率な事務処理に追われていました。
そこで、適用徴収事務の一元化や、事務の負担の軽減を目的に制定されたのが、この「労働保険徴収法」。労災保険と雇用保険を「労働保険」と総称し、両保険に共通する事務手続き上のルールなどを一つの法律にまとめて、事務処理を一括して行えるようにしました。この法律の施行により、事業主の負担が軽減され、労働保険事業の効率的な運営が行えるようになったのです。

具体的には、①保険関係の成立及び消滅、②労働保険料の納付の手続き、③労働保険事務組合等について定められていて、社労士の学習の範囲としてはかなり実務的な要素の強い科目となっています。

 

労働安全衛生法とは?

労働安全衛生法は、元々労働基準法の一部として規定されていましたが、労働者保護の観点から、内容をさらに充実させて、昭和47年に分離独立して制定されました。

この法律のいちばんの目的は、「快適な職場環境の実現と、労働条件の改善」。業務に起因するケガや病気を防ぎ、労働者の安全と健康を確保することを重視しています。

たとえば、工事現場で使用されている大型のクレーンなどが、万が一倒れてしまったら、そこで働く労働者だけでなく通行人まで巻き込んだ大事故に発展してしまうおそれがありますね。そういうリスクを防ぐために、安全衛生法では、危険度の高い機械の製造や設置について、厳しい規制を設けています。がんなどの重度の健康障害を引き起こすおそれのある有害物質についても同様です。
また、建設業などの下請け混在の事業場においては、安全衛生管理体制を定めて責任体制を明確にすることで、万が一の時に「責任逃れ」ができないような仕組みを作っています。
一般的に馴染みの深い項目は「健康診断」や「雇い入れ時の安全教育」などでしょう。

近年は、企業間競争の激化や労働者の働き方の多様化により、業務の集中しやすい世代の負担の増加が叫ばれています。特に、中高齢労働者の長時間労働に伴う脳血管疾患・心臓疾患の発生が問題視されるようになりました。そこで、平成8年から、それらを予防することを目的に、健康診断や産業医の要件を相次いで改正。
長時間労働に伴う疲労の蓄積や、心理的負荷等が原因で労働者の心身の健康を損なうことがないように配慮されるようになりました。
現在は、うつ病の予防など「メンタルヘルス」に関連した対策について、事業者の責務を強化することも検討されています。

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